裸の王様 (小説)[はだかのおうさま]
『裸の王様』は1958年に開高健が発表した短編小説である。第38回下半期芥川賞受賞作。急速に組織化されつつあった戦後社会における個人の重みを問われている。満たされない家庭生活と学校生活で萎縮してしまった少年太郎の気持ちを解き放つべく、<僕>は努力する。
==あらすじ==
大田太郎は山口の紹介で<僕>の画塾へ来ることになった。ある日、山口が自分の担任クラスの生徒である太郎の絵画教育を<僕>に頼んだ。
<僕>は実際に太郎にで絵を描かせてみたが、どの絵を見ても人間がいなく、努力を途中で放棄した類型の繰り返しの絵しか描けていなかった。
ある日、生徒の一人が小川でかいぼりをして、エビガニを釣ったことを話しているのを聞いて、太郎は田舎にいる時、スルメでエビガニを釣ったことを話した。
<僕>はそれを聞いて翌日、太郎と電車に乗り、川原に小魚を取りに行った。太郎は<僕>の期待通り懸命に小魚を取ろうと藻と泥にまみれ、<僕>に芯の強さを感じさせた。ある日<僕>は、新聞の小話からヒントを得て、即興でデンマークの文部省内児童美術協会宛てにアンデルセンの童話の挿絵を交換しようではないかと言う内容の手紙を出した。すると、ヘルガ・リーベフラウと言う人物から返事が返って来た。
それから一週間程して、大田社長から電話があった。大田氏は<僕>の絵の交換の話を知っており、<僕>の案を全国的な運動に拡大したいと提案した。
ある月曜日の夜、突然車に乗って太郎は<僕>の家に遊びに来た。太郎と談笑する中、<僕>は太郎が新しく書いた五枚の作品を見て哄笑した。そこには、フンドシをつけたチョンマゲの男が松の堀端を闊歩していた。それは<僕>が前に生徒に話した、骨格だけの「裸の王様」を絵にしたものだった。それを見て僕は太郎に創造力がついたことを見出して安心した。
暫くして、<僕>が児童画コンクールの審査会に行くと、すっかり失望してしまった。そこには絵本にあるような類型的な絵ばかりが選ばれていた。
<僕>は、ここにあるのは描かされた絵ばかりで、子供の現実が出ていないと不服を述べて、名は明かさずに太郎の絵を審査員達に見せると、審査員は集まって口々に太郎の絵を非難し出した。
審査員達の態度に反感を抱きながらも、<僕>はこの絵が応募作では無く、大田氏の息子である太郎が描いたことを明かした。
すると途端に審査員達は沈黙して互いの顔を見合わせ、一人一人と壇を下りて大田氏に目礼して去って行った。
<僕>の中の激しい憎悪が笑いの衝動に代わり、窓から流れ込む日光の中で、再び腹を抱えて哄笑した。
抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』
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